川連漆器のこと

川連漆器 とは。800年受け継がれる堅牢な器づくり。

豊かで、厳しい自然環境が生み出した 川連漆器 。

川連漆器 とは、秋田県の南部に位置する、湯沢市川連町にて作られる漆塗りの器で、古くから、お椀や重箱、お盆など生活に必要な器が作られてきました。
川連町は、横手盆地の南側に位置し、東には奥羽山脈が連なり、南には栗駒山麓と周りを山々に囲まれた、とても自然豊かな土地です。
奥羽山脈のふところに位置し、森林資源に恵まれたこの土地は、漆器づくりには最適だったのではないでしょうか。
また、日本有数の豪雪地帯でもある川連町では、長い農閑期に副収入を得るため、漆器づくりが始められたようです。
今ほど道路が整備される以前は、雄大な皆瀬川を利用して、栗駒山系のブナ等の原木を麓の川連町まで木流しにより運んでいました。
川を利用して運んできた原木は、川連町の水路を通り、町の中心部に運び込まれ、水揚げされました。
海からは程遠い川連町に、地元の人から、浜と呼ばれる地区があるのは、この名残です。
漆も、当時の職人が、豊富な山林に入り自ら漆掻きにより、自給が可能でした。
豊かな森林があり、雄大な川が流れる好条件が重なり、 川連漆器 は発展してきました。

川連漆器 の始まりは、武具に塗った漆から。

今をさかのぼること約800年前、源頼朝の家人 小野寺重道公が平家討伐に大きな手柄をたて、稲庭城に居城し、その弟である道矩は、古四王野尻大館(現在の川連町大館)に居住しました。
その頃、川連村は農業が主体にもかかわらず、1年の半分を雪で覆われ、何か副収入を得なければいけない程、困窮していました。
小野寺道矩が豊富な木材と漆を用い、家臣に内職として鞘、弓、鎧などの武具に漆を塗らせたのが 川連漆器 の始まりと言われています。
本格的に、漆器産業が発達したのは、江戸時代初期ごろからで、川連村を中心としたおよそ26戸が椀師業を営んだとの記録が残っております。
江戸時代中期には、藩の許可を得て販路を他国にひらき、江戸時代後期には、藩の保護の元、椀・膳・重箱など幅広い生活用品がつくられ、沈金・蒔絵などの加飾が加わりました。
明治初期にはさらに新しい技術開発が行われ、今日の 川連漆器 の特色である堅牢な漆器が作られるようになりました。
昭和51年12月に、国の伝統的工芸品の指定を受け、今では全国でも有数な産地として成長しております。

川連漆器 は、「燻煙乾燥」と「花塗り」が特徴。

川連では、豊富な栗駒山系の木材を切り出し、粗挽きした木地を昔ながらの煙で燻す「燻煙乾燥」で乾燥させ、木材の狂いや歪みを減らします。
燻すことで、防虫効果や、防腐効果もあり、木材の強度も上がります。
塗った後に、研いだり磨いたりせずに漆の質感そのままに仕上げる「花塗り」も 川連漆器 の特徴の1つです。
漆を塗ったままですので、ぽってりとした優しい輪郭に仕上がります。
漆の流れを読み、自然そのままの漆の光沢や線を活かした塗りである花塗りは、高度な技術を要しますが、漆、本来の持ち味を最大限に活かした塗りだと言えるのではないでしょうか?

生漆を使った下地による堅牢な器。

川連漆器 は、本体部分のゆがみを止めるために、生漆を使った地塗りを数回繰り返す、本堅地や、蒔地を用い堅牢に仕上げています。
孫の代まで持つと言われるのもこのためです。
しっかりと下地を行なった後、漆を塗っては、研ぐを何度も繰り返し、綺麗な形に整えていきます。
そして、最後に塗り立てと言われる「花塗り」で仕上げます。

挽地から塗り、加飾までを産地の中で一貫して製造。

近隣の山々から切り出した木材を使い、木材を器の形に挽く「挽地」。
挽地によって作られた木地に漆を塗る「塗り」。
塗りあがった漆器に沈金や蒔絵などを施す「加飾」。
川連では、この全ての工程を産地の中で一貫して製造しています。
豊富な資源と、先人の技術を代々継承してきたからこそ可能で、いまでは数少ない一貫生産を行なっている産地です。

漆器による、断熱、保温、抑菌効果。

漆器のお椀は、和食に欠かせないお味噌汁用の器として昔から使用されてきました。
木材からできているお椀は、断熱性に優れ、熱い味噌汁をよそっても、器を持つ手が熱くありません。
手に持って使う器である汁椀には、漆器が最適です。
保温効果もあり、お味噌汁の温かさを長く保ってくれます。
また、お花見やおせち料理などには、漆塗りの重箱に料理を詰めて、料理を持ち運んだり、保管したりすると思います。
昔から、漆器に入れた料理はいたみにくいと言われ重宝されてきました。
近年、科学的な見地からも漆器には、菌の抑制作用があることが立証されています。
大腸菌、MRSA、サルモネラ、腸炎ビブリオに対して強力な抗菌作用があることが分かりました。
また、新型コロナウイルスに対しても、24時間で99%以上のウイルスを減少させる効果があることも発表されています。
漆器といっても、木製ではなく樹脂製であったり、合成樹脂塗料で仕上げられていたりすることもあるようです。
こうなると、昔ながらの漆器の特性である断熱、保温は期待できませんし、抑菌効果は全くありません。
川連漆器 は、天然の木材と、天然の漆を使用して作られていますので、断熱、保温、抑菌効果が期待できます。

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